ノロウイルス
乳幼児の症状と特徴、予防は?
特定医療法人同仁会・介護老人保健施設
みみはら施設長 小児科医 古川 冨美枝
ノロウイルス胃腸炎は乳幼児から高齢者まですべての年齢層にみられ、ロタウイルスと共に冬季下痢症の主要原因ですが、近年初夏にも報告されてきました。潜伏期間が1~2日で突然の嘔吐で始まることが多く、発熱、下痢(血便を伴わない)、腹痛を主症状とし、全身けん怠感、筋肉痛、頭痛などを伴います。特に嘔吐は頻度が高く、ウイルスは腸管内で増殖し、吐物、糞便に大量のウイルスが排出されます。乳幼児の場合、症状消失後は4週間も糞便中にウイルスが排出され感染源になると言われています(成人は2~3週間)。保育所など集団で生活する場所での二次感染に気をつける必要があります。食中毒予防には石鹸での手洗い、うがいの励行が大切です。食材は85度1分以上、食材の内部まで十分加熱すること、調理器具は85度以上の熱湯消毒をするか、塩素系消毒薬又は台所塩素系漂白液(いずれも200倍希釈)に1時間浸した後、水洗いして使用します。ノロウイルスは低温、乾燥に強く、カーペットなどに汚染物質がついたままにすると、空気中にウイルスが浮遊し、口に入り感染する危険性があります。吐物などの汚染物質は使い捨てマスク、手袋を使用し速やかにペーパータオルで覆い乾燥・拡散することを防止します。その上から塩素系消毒薬又は台所塩素系漂白剤を原液のままふりかけ浸し、ペーパータオルで包むように汚染物質を取り除き、ビニール袋に入れて処理します。もう一度その場所を希釈した塩素系消毒薬又は台所塩素系漂白剤で清拭します。塩素の刺激臭が強いので目・気道粘膜障害予防のためこども達は遠ざけて作業しましょう。乳児のおむつ交換も同様に紙おむつ、使い捨て手袋を使用しビニール袋に入れて処理し、しっかり手洗いをします。吐物がついた衣服は水洗い後、煮沸消毒をします。オマルは塩素系漂白薬又は台所塩素系漂白剤を50倍にうすめて洗い流してください。
感染した場合、ほとんど2、3日でおさまりますが、脱水予防のため嘔吐、下痢症状の発症後2~4時間以内に、下記の経口補水液などを少量ずつ(1口5ミリリットル)まめに補給することが大切です(1日体重1キロあたり約80から100ミリリットルがめやす)。嘔吐がおさまってきたら離乳食も少量ずつ開始しましょう。
嘔吐、下痢症状がおさまらないときは、早めに受診しましょう。乳児では、下痢症状をともなう無熱性けいれんをおこすことがあります。現在、ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬はありません又検査は保険が利きませんのでご注意ください。下痢がおさまらないうちは休養をとり体力を回復させましょう。体重増加の確認も大切です。
● ホームメイドの経口補水液の作り方 |
1. |
ティースプーン2分の1杯強(3.5グラム)の塩 |
2. |
ティースプーン8杯(40グラム)の砂糖 |
3. |
1リットルの水 |
4. |
以上を混合する |
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市販のスポーツドリンクなどイオン飲料水はナトリウム濃度が低く、これだけを脱水症の治療に使うと、低ナトリウム血症による水中毒(脳浮腫からくるけいれん)を起こす危険性がある |
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