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保育をめぐる情勢
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いろはにほいく ちえぶくろ [19]
「新子育て安心プラン」
またもや待機児童解消は先送り

岩狭 匡志 (大保連副会長)


 厚生労働省が昨年末に待機児童解消を目指す「新子育て安心プラン」を公表し、2021年度から2024年度までの4年間で約14万人の保育の受け皿を整備するとしています。これまでも待機児童解消を目指した計画は、2013~2017年度の「待機児童解消加速化プラン」、2018~2020年度の「子育て安心プラン」とありましたが、いずれも目標達成は先送りされています。
 過去の計画が未達に終わったのは、女性の就業率の向上や幼児教育・保育の無償化の影響もあり、都市部を中心に保育所整備を上回るペースで利用希望者が増えたためです。
 昨年4月の待機児童は約1・2万人で過去最低とされていますが、保育所などを希望しても利用できず待機児童としてもカウントされていない隠れ待機児童は9万人以上で過去最高となっています。

施設整備目標は不十分

 新計画による保育施設の整備は、2020年度からの第2期市町村子ども・子育て支援事業計画の「確保方策」の積み上げを見込んでいるだけです。これまでの計画でも、おおむね同様の方法で待機児童が解消されず、隠れ待機児童が増えていることからすれば、新計画の整備だけでは不十分となります。本当の意味での待機児童解消を目指すのであれば、条件を狭くした待機児童への対応のみに着目するのではなく、隠れ待機児童への対応も含めた施設整備ができるよう、抜本的な見直しが必要です。

保育の基準は緩和でなく改善を!

 また、新計画では、保育士不足に対応するため、ひとクラスに1人常勤の保育士の配置を義務づけている制度を改め、短時間勤務の保育士2人を組み合わせることを条件付きで認めることや、小規模保育事業の定員緩和をすることなども考えられています。「量」の確保を優先することで、保育内容や環境といった「質」の悪化が懸念されます。保育の基準は緩和するのではなく、改善することこそが必要です。

児童手当見直しでなく保育予算増額を!

 さらに、新計画の実現のための財源が1440億円必要とされており、このうち1000億円は企業の拠出金で賄われますが、残りは児童手当の特例給付を見直して、夫婦どちらかの年収が1200万円以上の世帯を2022年10月以降対象から外すなどして捻出する方針となっています。日本の保育に対する財政支出は国際的な水準からすると不十分なので、児童手当から財源捻出するのではなく、保育予算の増額こそが求められます。



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